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前回の記事「発明すれば会社から報奨金がもらえる!?職務発明制度を簡単に解説します」では、会社が価値ある発明だと評価するような職務発明を届出すれば報奨金をもらうことができる、また、会社が価値ある発明だと評価するような職務発明というのは、コツさえつかめば、意外と簡単に提案できたりするのだということをお話ししました。
今回は、【発明報奨金をもらうコツその1】として「小さな改良点を見つける」について説明します。
特許が認められるための要件(これを「特許要件」という)が6つくらいあるのですが、既存製品や既存サービスに対する「小さな改良点」のアイデアさえあれば、この特許要件をクリアできる可能性が十分にある、というお話しになります。
特許が認められるための要件「特許要件」について
まず、特許が認められるための要件、「特許要件」について簡単に説明することにします。
発明報奨金をもらうには特許要件を満たす発明であること
特許というのは、日本をはじめほとんどの国でも同様、特許庁での審査に合格してはじめて認められるのです。
具体的には、書面に記載された発明を特許庁に提出し(これを「特許出願)という)、その内容を特許庁の審査官が審査して、所定の特許要件を満たしている、即ち特許として認められるものについて合格の通知(これを「特許査定」という)をうけます。特許査定の通知をうけたものは特許として登録されます。
一方、特許庁の審査官による審査で所定の特許要件を満たさないと最終的に判断されたものには不合格の通知(これを「拒絶査定」という)がなされ、特許は認められない、特許登録されないということになります。
発明報奨金をもらうためには「会社が価値ある発明だと評価するような職務発明」を提案する必要があると前回の記事で説明しましたが、「価値ある発明」であるからには少なくとも特許が認められる発明、言い換えると特許要件を満たす発明であることが必要最低限の条件となります。

6つの特許要件について説明
まずは「特許要件」の具体的な内容について説明することにします。日本の特許法で定める「特許要件」とは次の6つのことを指します。
1.特許法で定義される「発明」であること
特許法では、「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定されています。
この論点について深堀りすると長くなってしまいますので詳細は割愛しますが、結論から言うと、PC、ゲーム機、スマホなどの電子製品をはじめ、自動車、機械、玩具などのハードウエアに関するアイデアや、アプリケーションプログラム、オンラインサービスなどのソフトウエアに関するアイデアなど、ほぼすべてが特許法で定義される「発明」になります。
2.産業上の利用可能性があること
特許制度は、産業の発達を目的として設けられている制度です。特許として認められるためには、産業上で利用できる発明であることが必要となります。
皆さんは職務発明、つまり会社の職務に関係する発明をするわけですから、必然的に産業上で利用できる発明になります。
3.新規性を有すること
新規性とは、発明がこれまで世の中になかったものであること、を言います。
特許法では、以下の3つのケースの発明は特許が認められないとしています。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
例えば、その発明が搭載された製品やサービスがリリースされた場合や、その発明の内容がわかるように広告・宣伝がされた場合、書籍や論文などで発明の内容が開示された場合など、その発明に対する新規性が失われることとなります。
4.進歩性を有すること
仮に、新規性を有する発明であったとしても、進歩性を有する発明でなければ、特許は認められません。特許法では、進歩性について次のように記載されています。
「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基づいて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」
簡単に言うと、すでに世の中に知られた製品・サービスやネット上などで公開された情報を参考にして、その業界の者であれば容易に発明をすることができたと特許庁の審査官により判断された場合は、進歩性が否定されます。
以上のように、容易に発明できないというのが「進歩性」であり、この進歩性の要件が特許要件のなかで最もクリアが難しいものとなります。とはいえ、後ほど解説しますが、それほど難しく考える必要はありません。
5.先願であること
特許法では、「同一の発明について異なった日に二以上の特許出願があったときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。」とされています。
同じ発明の特許出願が複数提出された場合には、最初に提出されたものについてのみ特許が認められるということです。同業者間では同じようなタイミングで同じような製品開発がなされることも多いですから、ときには特許出願が数日の差で遅れたためにライバルに特許を取られてしまったという話も耳にします。運の要素も大きいですが、いいアイデアを思い付いたら一日も早く特許出願するのがいいでしょう。
6.公序良俗を害する発明でないこと
特許法では、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生(公序良俗)を害するような発明について、特許を受けることができないと規定しています。
特許というのは国が独占実施を認めるものですから、公序良俗を害する発明は特許として認められないのは当然と言えば当然でしょう。

意識すべき特許要件は「新規性」と「進歩性」の2つ
以上で6つの特許要件を説明しました。6つも要件があって大変だなあと思うかもしれませんが、この6つのうち、「1.特許法で定義される「発明」であること」、「2.産業上の利用可能性があること」、「6.公序良俗を害する発明でないこと」の3つの特許要件については、皆さんの勤める会社での職務発明であれば意識せずとも当然クリアできているはずです。
また、「5.先願であること」は、ライバルよりも先に特許出願を提出できるかどうかは予測不可能であり、ほぼ運まかせになりますので、この特許要件についても職務発明を提案する者として、特に意識する必要はありません。
以上のとおり、職務発明を提案する際に意識すべき特許要件は、「3.新規性を有すること」と「4.進歩性を有すること」この2つだけとなります。
新規性と進歩性を有する職務発明であれば特許要件を満たすものとなり、会社が価値ある発明だと評価するような職務発明として、発明報奨金をもらえる可能性が高くなります。

「小さな改良点」で新規性と進歩性をクリア
前置きが長くなりましたが、いよいよ、既存製品や既存サービスに対する「小さな改良点」のアイデアさえあれば6つの特許要件をクリアできる可能性が十分にある、ということの説明をします。
「新規性」について
既存製品や既存サービスに対する「小さな改良点」のアイデアを皆さんが考えたとすると、そのアイデアが反映された製品やサービスはまだ世の中に存在していないはずです。
念のため、インターネットを検索してみて、そのようなアイデアが反映された製品やサービスについての記載が無いことが確認できれば、その「小さな改良点」のアイデアであるが発明がこれまで世の中になかったものとなるので、新規性を有すると言えます。
後でも説明しますが、「小さな改良点」のアイデアが、既存のものをどうしを組み合わせたアイデア、例えば「既製品A+既知の仕組みB」であったとして、「A」単体と「B」単体それぞれは世の中に知られていたとしても、「A+B」として一体となったものが(この発明が特許出願された時点で)世の中に知られていなければ、「A+B」のアイデアは新規性を有すると言えます。
「進歩性」について
すでに世の中に知られた製品・サービスやネット上などで公開された情報を参考にしても、その業界の者でも容易には思いつかないアイデアと言えれば、進歩性を有することになります。
容易に思いつくかどうかで決まる点がポイントとなり、ちょっと理解が難しいかもしれませんが、容易に思いつかないということと、画期的で大幅な変更であることや、技術的に高度な改良であることは必ずしもイコールではありません。「小さな改良点」であっても容易には思いつかないと言えれば進歩性を有することになるのです。
1つゲームアプリの例をあげて説明します。
ゲームアプリなどでよく見かける「仮想コントローラ」というシステムをご存じかと思います。タッチパネル上を指で上下左右にスライドさせると、スライドさせた方向の入力がなされてキャラクタが移動したりします。この仮想コントローラのシステムで特許が取得されています。
この仮想コントローラは、タッチ入力式のゲーム機という既存製品に、方向キーや方向レバーといったハードウエアとして既存の仕組みを組み合わせて出来た発明と言えます。
「新規性」のところで説明しましたが、仮想コントローラは「既製品A+既知の仕組みB」による発明であり、「A」単体と「B」単体それぞれは世の中に知られていたとしても、「A+B」として一体となったものは(この発明が特許出願された時点で)世の中に知られていないので「新規性」は有する発明です。
しかし、もとになったアイデア「A」と「B」は、どちらも世の中で既知のものですから、ゲーム業界の者であれば容易には思いつきそうです。新規性は有するとしても、進歩性がないように思えそうですが、実はそうではありません。
仮想コントローラの発明がもたらした効果は、タッチパネル上での上下左右方向のスライド操作を各方向への移動入力に変換したので、タッチパネルによっても方向キーや方向レバーといったハードウエアと同様に直感的な移動入力が可能になったということです。
ところが、既存の方向キーや方向レバーといったハードウエアは、手からの直接的な物理的入力をゲーム内の各方向への移動入力に変換するものであって、そもそもタッチパネルなど他の入力デバイスから信号を受けることは想定されておらず、従ってタッチパネルなど他の入力デバイスからの信号をどう処理するのかについてはヒントさえも示していません。
つまり、タッチ入力式のゲーム機という既存製品に、方向キーや方向レバーといったハードウエアとして既存の仕組みを組み合わせた場合、タッチパネルの横にハードウエアとしての方向キーや方向レバーを一緒に装備したゲーム機というのは誰でも容易に思いつくことができるが、仮想コントローラというシステムは、タッチパネル上のスライド操作を各方向への移動入力に変換するという作用・効果は既知のものではないので、ゲーム業界の者であっても容易には思いけず、進歩性を有すると主張することができるのです。
仮想コントローラの発明は、進歩性を理解するうえでわかりやすい例として挙げましたので、必ずしも「小さな改良点」としての好例ではありませんでした。
ここで言いたかったのは、既存製品や既存サービス「A」に、何か別の既存の仕組み「B」をくっつけたような発明「A+B」でも進歩性を有するケースは多いということです。画期的で大幅な変更である必要はなく、技術的に高度な改良である必要もありません。

まとめ
以上のとおり、【発明報奨金をもらうコツその1】として「小さな改良点を見つける」というコツについて説明しました。
発明報奨金をもらうための第一歩として必要なことは、特許が認められるような職務発明を提案することであり、特許が認められるためには6つの特許要件をクリアする必要があります。
6つの特許要件のうち意識すべきものは「新規性」と「進歩性」の2つであり、とくに進歩性をクリアすることが特許要件クリアのポイントとなります。
進歩性と言ってもあまり難しく考える必要はありません。画期的で大幅な変更である必要はなく、技術的に高度な改良である必要もありません。既存製品や既存サービスに何か別の既存の仕組みをくっつけたような「小さな改良点」のアイデアでも進歩性を有するケースは多いのです。
今回の記事はいかがでしたでしょうか?
ちょっと難しかったでしょうか?
もう少し深く知ってみたいという方は、知的財産管理技能検定3級や2級にもチャレンジいただくといいかなと思います。
「発明報奨金をもらうコツ」については、また記事を書きますのでよろしくお願いいたします。