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知的財産に関する実務経験が全くなしで二級知的財産管理技能士を取得し、幸運にも企業の知的財産部門に入れたとして、そこでやっていけるのでしょうか?
ケースバイケースとはなるものの、多くの場合、実務経験なしでも二級知的財産管理技能士のスキルがあれば、企業の知的財産部門でやっていくことは可能です。
私の経験からIT企業の知的財産部門という限定された状況にはなりますが、実体験と実際に見聞きしたことをふまえながら、説明していくことにします。
企業の知的財産部門に入ってから身につけるべきスキル
二級知的財産管理技能士というのは、「知的財産管理の職種における中級の技能者」であり、企業の知的財産部門において戦力となる中堅クラスのスキルを有していることの証でもあります。
しかし実際には、二級知的財産管理技能士の資格を有していたとしても、それだけで知的財産部門における実務を100%こなせるかと言うと、そうではないことも多かったりします。
例えば、特許や商標の調査は社外の特許事務所に依頼せずに知的財産部門で実施することが多いのですが、無償の調査ツールとして有名な「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使った検索スキルなどは、実際の業務のなかで学んでいかなければなりません。
また、特許に関する業務であれば、まず自社製品に使われている技術を学ばなければ、特許調査や特許出願などもできません。
例えばゲーム会社であれば、いろいろなゲームをよく知っているというだけではなく、どういう処理でゲーム進行されているのか、どういう思想でUI設計されているのか、といったことを理解しなければなりません。これは知的財産部門での実務経験があったとしても他業界から転職して来たような場合には、ゼロからのスタートになるので大変です。
もちろん、特許や商標の調査から出願・権利化までを、すべて社外の特許事務所に丸々委託するというのであれば、技術理解、社内事情への精通、人脈構築などを除いて、企業の知財部門に入ってから身につけるべきスキルはほとんど無いかもしれません。
しかし、それでは三級知的財産管理技能士のスキルで十分であって、二級知的財産管理技能士のスキルは必要ない仕事となり、せっかくとった資格が活かせないということになってしまいます。

業務のことで相談できる上司や同僚がいる場合
上で説明したように、企業の知的財産部門に入ってから身につけるべきスキルがあるような場合、その知的財産部門でやっていけるかどうかは、如何にして必要なスキルを身につけるのかという点にあります。
例えば、ある程度人数のいる知的財産部門に入った場合、業務のことで相談できる上司または同僚がいることでしょう。であれば、わからないことは上司や同僚にどんどん質問して教えてもらいましょう。自社製品に使われている技術なども、基本的なものはエンジニアではなく知的財産部門の上司や同僚に教えてもらっておくほうが無難です(開発者は技術がわからない人にかみ砕いて技術のことを教えるのが苦手なことが多い)。
二級知的財産管理技能士の資格をもっているのに仕事を教えてもらうのは恥ずかしいと感じるかもしれませんが、教えてもらわずに勝手にやればクオリティの低い仕事をしてしまうことになり、もっと恥をかいてしまうかもしれません。
どれほどの場数を踏むかにもよりますが、ベースとして二級知的財産管理技能士のスキルがあるのであれば、上司や同僚から1、2ヶ月も教えてもらえれば、そのあとは独力で仕事をこなすことができるようになることでしょう。

業務のことで相談できる上司や同僚がいない場合
一方、その会社ではじめて採用する知財担当者が自分であったような場合、業務のことで相談できる上司や同僚はいません。こういう場合にはどうすればいいでしょうか?
教えてくれる上司や同僚がいない場合には、特許事務所をフル活用しましょう。最初のうちは、特許や商標の調査から出願・権利化までを、すべて社外の特許事務所に丸々委託するようにします。
ここで、ただ丸投げするのではなく、事業部門やエンジニアとの打合せに特許事務所の弁理士とともに同席して弁理士がどういうことを聞き出そうとしているのかをよく観察して学ぶようにします。
また、特許事務所からの納品された調査結果レポートについては、どういう調査をしてこの結果になったのかなど、調査手法についても詳しく質問し、学ぶようにします。
特許事務所からすると面倒くさいクライアントだと思われてしまうかもしれませんが、仕事を学ぶためだと割り切りましょう。
二級知的財産管理技能士のスキルがベースとしてあって、この方法を実践すれば、半年程度で難易度の低い調査は独力でできるように成長できるはずです。そして徐々に独力で対応できる範囲を増やしていけるようにすればいいでしょう。

まとめ
以上のとおり、知的財産に関する実務経験なしで二級知的財産管理技能士を取得し、企業の知的財産部門に入った場合、通常は二級知的財産管理技能士のスキル以外にも身につけるべきスキルがあります。
知的財産部門に業務のことで相談できる上司や同僚がいる場合には、そのような上司や同僚に教えてもらいながらスキルを身につけるようにします。ベースとして二級知的財産管理技能士のスキルがあれば難しいことではありません。
また、知的財産部門に業務のことで相談できる上司や同僚がいない場合には、社外の特許事務所に業務を委託しつつ、特許事務所から仕事を学ぶようにすればスキルを身につけることができます。この場合もベースとして二級知的財産管理技能士のスキルがあれば、十分に可能となります。
つまり、実務経験なしで企業の知的財産部門に入っても、ベースとして二級知的財産管理技能士レベルのスキルがあれば十分やっていくことは可能なのです。