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老人ホームへの入居を考えたとき、多くの方が直面するのが年金だけでは生活費が足りないという不安です。年金受給額の平均値、老人ホームの費用相場、特養と民間施設の違い、生活保護の可否など、老人ホームと年金の問題は複雑に絡み合っています。特に、親の介護を考える子世代にとっては、将来的な資金不足が現実的な悩みとなり得ます。
しかし、老人ホームで年金だけでは足りないという問題は、個人の準備不足だけが原因ではありません。制度の仕組みや施設ごとの費用構造を正しく理解することで、選択肢は大きく広がります。本記事では、行政書士として相続や老後資金の相談を受けてきた立場から、老人ホームで年金だけでは足りないときの現実的な対処法について、制度面と実務面の両方を踏まえて解説します。
- 本記事を読んでわかるポイント
- ・年金受給額と老人ホーム費用の現実的な差
・年金の範囲内で入居しやすい老人ホームの種類
・年金だけでは足りない場合に使える公的制度
・家族が知っておくべき法的・金銭的注意点
老人ホームで年金だけでは足りない現実と理由

まずは、なぜ老人ホームに入居するにあたって年金だけでは費用が足りない状況が生まれるのか、その背景を整理します。年金制度の基本と施設費用の実態を知ることが、対策の第一歩です。
年金受給額の平均値と実態
結論として、現在の日本の公的年金は、老人ホームへの入居費用までを十分にカバーできる設計にはなっていません。老齢年金の受給額は、国民年金か厚生年金か、また加入期間や報酬水準によって大きく異なります。
国民年金のみの場合、満額受給でも月額6万円台が上限に近く、実際には月額5万円台にとどまる方も少なくありません。厚生年金を含む場合でも、単身高齢者の平均値は月額14万円前後とされています。
重要: これら年金受給額の平均値は「税金・社会保険料控除前」で示されることが多いので注意してください。
更に現実には、上記の年金受給額から介護保険料や住民税が差し引かれ、手取り額はさらに低くなります。また、日本の年金制度自体が「自宅での生活」を前提に設計されており、介護施設入居という高コストな生活形態は想定されていないことも、年金だけで老人ホームへの入居費用までを十分にカバーできない結果を招く理由となっています。
このように、年金だけで老人ホーム生活を維持できないのは、老後に備えることができなかった個人の失策ではなく、日本の年金制度の構造上の問題であることを、まず正しく理解する必要があります。
老人ホーム費用の相場
老人ホームの費用相場は、施設種別・立地・サービス内容によって大きく異なりますが、一般的には月額10万円〜25万円程度が一つの目安です。この金額には、居住費、食費、管理費が含まれるのが通常です。
注意: 老人ホームのパンフレットにある「月額費用」は最低ラインであるケースが多い点に注意が必要です。
老人ホームのなかでも、特に民間施設では、基本料金とは別に、介護度に応じた加算、医療連携費、レクリエーション費などが加算されます。結果として、入居後に想定よりも支出が増えるケースは珍しくありません。
| 費用項目 | 月額目安 |
|---|---|
| 居住費 | 3〜8万円 |
| 食費 | 3〜5万円 |
| 管理費 | 2〜10万円 |
仮に年金収入が月10万円前後であった場合、この時点で赤字になる構造が明確に見えてきます。
特養(特別養護老人ホーム)なら年金で足りるか?
特別養護老人ホーム(以下、特養)は公的な制度に基づく施設であり、所得に応じた負担軽減措置が整っているため、条件が整えば年金の範囲内で生活できる数少ない選択肢の一つとなります。
費用の内訳は主に居住費・食費・介護サービス費で構成されており、所得が低い場合には補足給付などの支援が適用されることがあります。その結果、月々の自己負担が概ね5万円前後まで下がるケースも見られます。
ただし、入居条件と待機については、原則として要介護3以上が入居要件となっており、地域によっては入居までに数年の待機期間が生じることがあります。入居の可否や時期が最大の課題となる点に留意が必要です。
注意: 特養に入居するには要介護3以上が原則条件であり、待機期間が数年に及ぶ地域もあります。
更に居室の違いも費用に影響します。個室と多床室では負担額が大きく異なるため、希望する居室タイプと費用のバランスを事前に確認してください。
特養は費用面で有利な面がある一方で、入居要件や待機状況、居室選択など実際の利用可能性を慎重に見極めることが重要です。必要に応じて市区町村の窓口や専門家に相談すると安心です。
民間老人ホームの費用差
民間の老人ホームは、提供されるサービスの内容や自由度が多様である反面、費用に大きな差がある点が特徴です。比較的安価な施設では月額が10万円台から設定されていることもありますが、都市部にある施設や介護体制が手厚い施設では月額が30万円を超える場合もあります。
また、入居一時金を求める施設では、入居時に数百万円単位の初期費用が必要となることがあります。費用の内訳や返還規定は施設ごとに異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
注意: 入居一時金が設定されている民間老人ホームでは、初期費用として数百万円が必要になることがあります。
民間の老人ホームでは契約形態についても、「終身利用権方式」や「賃貸借方式」など複数の種類があり、仕組みがやや複雑です。内容を十分に理解せずに契約すると、途中退去時の返金や権利関係でトラブルになる可能性があるため、契約書の条項を丁寧に確認し、必要に応じて家族や専門家に相談することをおすすめします。
入居後に増えるおむつ代や雑費
老人ホームに入居した後、多くの家庭が想定していなかったと感じるのが、日常的に発生する雑費の積み重ねです。おむつ代、理美容代、通院の付き添い費、医療費などは、合計すると月に数万円に達することがあります。
老人ホームのパンフレットや料金表に記載されている金額が、必ずしも実際の支出と一致するわけではないことを理解しておくことが重要です。表示されている基本料金に加えて、個別のサービスや消耗品費が別途かかる場合が多くあります。
これらの雑費は、介護度が上がるほど増える傾向がありますので、入居前に想定される費用の範囲を施設に確認し、家計の見通しを立てておくことをおすすめします。必要であれば、具体的な費用例を施設に提示してもらうと安心です。
老人ホームで年金だけでは足りない時の対策

一方、年金だけでは老人ホームの費用に足りない場合でも、制度や資産を組み合わせることで解決策は存在します。ここからは現実的な対策を整理します。
補足給付による老人ホーム費用の軽減
補足給付(特定入所者介護サービス費)は、所得や資産が一定以下の方を対象に、居住費や食費の負担を軽減する公的な制度です。特別養護老人ホームだけでなく、介護老人保健施設などでも適用される場合があります。
ただし、この補足給付の制度は申請主義のため、自発的に申請を行わなければ軽減は受けられません。また、申請後の審査では預貯金額などの資産も確認されるため、事前に適用基準を確認し、必要に応じて家族やケアマネジャーや市区町村の窓口などに相談しておくことが重要です。
重要: 補足給付(特定入所者介護サービス費)は申請主義のため、申請しなければ一切軽減されません。
世帯分離による介護費削減
世帯分離とは、住民票上の世帯を分ける手続きで、これにより介護保険料や自己負担割合が変わる場合があります。その結果、介護サービス利用時や施設入居時の負担が軽くなり、施設費用の実質的な削減につながることがあります。
ただし、世帯分離を行うと扶養控除や税負担、年金・生活保護などの取り扱いに影響が出る可能性もあります。税金や公的給付の計算方法が変わることで、家計全体の負担が増えるケースもあるため、メリットだけで判断しないことが重要です。
世帯分離の手続きによる具体的な影響は自治体や個々の収入・資産状況によって異なりますので、実施を検討する際は、市区町村の窓口やケアマネジャー、税理士などの専門家に相談し、総合的に判断することをおすすめします。
注意: 世帯分離は扶養控除や税負担が増えるケースもあるため、慎重な検討が必要です。
自宅売却やリバースモーゲージ
一方、持ち家がある場合、その持ち家(不動産)を資金源として活用する選択肢もあります。ただし、自宅売却はまとまった現金を得られる一方で、住み替えや引越しが必要になり、生活設計が大きく変わる点に注意が必要です。売却に伴う諸費用や税金、仲介手数料なども発生します。
リバースモーゲージは、自宅に住み続けながら資金を得る方法で、当面の生活資金や介護費用の補填に適しています。ただし、契約条件や利息、返済方法によっては将来の相続財産が減少するため、相続への影響を避けられません。
しかし、上記いずれの方法も家族の生活設計や相続方針に直結します。家族全員で方針を共有し、必要に応じて不動産業者、金融機関、税理士、司法書士などの専門家に相談して、費用・税務・相続の影響を総合的に検討することをおすすめします。
生活保護で入居できる老人ホーム
生活保護は、あらゆる手段を尽くしても生活が成り立たない場合の最後のセーフティネットです。生活保護を受給しながら入居できる老人ホームも存在しますが、入居の可否や支援の内容は施設ごと、自治体ごとに異なります。
この場合、老人ホームへの入居にあたっては、生活保護の受給手続きやケースワーカーによる生活状況の確認が前提となることが多く、施設側でも受け入れ基準や運用ルールを設けています。居住環境や提供されるサービスの範囲、自己負担の扱いなども施設によって差があるため、事前に確認することが重要です。
具体的な判断基準や手続きについては、市区町村の福祉窓口や担当のケースワーカー、入居を希望する施設に相談して、必要な書類や流れを確認してください。
重要: 生活保護で老人ホームに入居できるかどうかの判断基準や運用は自治体ごとに異なります。
まとめ:老人ホームで年金だけでは足りないときの現実的な対処法
老人ホームで「年金だけでは足りない」と感じたときは、まず現状を正確に把握することが出発点です。収入と支出、貯蓄、介護保険の給付や施設の費用構成を整理すれば、選べる対策が明確になります。
短期的には支出の見直しや利用サービスの最適化(ショートステイ・デイサービスの活用、居室タイプの変更など)、家族や地域の支援を頼ることが現実的です。中長期的には施設のランクや立地を見直す、資産の整理や売却、働ける範囲での就労や年金以外の収入源を検討するといった選択肢が有効になります。
公的制度や補助(介護保険、生活保護、自治体の支援制度)や専門家の相談窓口を活用することで、負担を軽くできる場合があります。一人で抱え込まず、早めに相談・情報収集を始めることが重要です。
最後に、費用の問題は生活の質や尊厳にも関わる大切な判断です。数字だけでなく本人の希望や家族の状況も踏まえ、優先順位をつけて現実的に動くことで、無理のない解決策が見えてきます。必要な一歩を小さく始めていきましょう。
次のアクションへのヒント
■ 有料老人ホームの無料相談・見学はこちらが参考になります。
■ 老人ホームについては、こちらの記事も参考になりますのでご参照ください。