知的財産管理技能士は役に立たない資格なのか?

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知的財産管理技能士は役に立たない資格なのか?

知的財産関連の国家資格といえば、弁理士か知的財産管理技能士(通称「知財検定」)ですが、比較的取得が容易とされる知的財産管理技能士に興味をもつ人も多いのではないでしょうか?

しかしネットを調べて見ると、知的財産管理技能士は役に立つ資格だという記事もあれば、知的財産管理技能士は全く役に立たない資格だという記事もあります。

一体どちらが本当なのでしょうか?知的財産管理技能士の取得を目指して勉強していいのかどうか迷ってしまいますよね。

答えは、「知的財産管理技能士の資格をどのように活用したいかによる」ということ。

つまり、活用目的によって、知的財産管理技能士の資格が役に立つ場合もあれば、役に立たない場合もあるということなのです。

この記事では、知的財産管理技能士の資格がどのような活用目的では役に立ち、どのような活用目的では役に立たないのかを解説します。

知的財産管理技能士の資格が役に立たないと言われる理由

まず、知的財産管理技能士の資格で出来ることと出来ないことを説明し、知的財産管理技能士の資格が役に立たないと言われる理由について解説します。

知的財産管理技能士の資格で出来ること

知的財産管理技能士の資格で出来ることは、「知的財産管理に必要な技能及び知識を一定程度以上有していることを客観的に証明すること」です。

知的財産管理技能検定のサイトによると、知的財産管理技能検定1級、知的財産管理技能検定2級、知的財産管理技能検定3級の試験で問われる「技能検定の合格に必要な技能及びこれに関する知識の程度」が示されています。英検などと同様、合格した級に対応した知識レベルが定められています。

例えば、知的財産管理技能検定1級に合格して「一級知的財産管理技能士」を取得したなら、知的財産管理技能検定1級に対応した知的財産管理に必要な技能及び知識を有していることが客観的に証明されるのです。

知的財産管理技能士と比較される知的財産関連の国家資格である「弁理士」について見てみると、弁理士試験は、特許法、商標法、意匠法などの高度な法律知識等が問われる3次の試験(短答試験、論文試験、口述試験)をすべてパスしないと合格できないもので、最終合格率6%程度という超難関試験です。

ということは、弁理士の資格を持っているのであれば、超難関な弁理士試験に合格できるレベルの特許法、商標法、意匠法などの法律知識を有しているとともに、人よりも非常に頭が良いということを客観的に証明できると言うことができます。

このように弁理士の資格と比較すると知的財産管理技能士の資格は見劣りするようにも思えますが、知的財産管理技能士の資格でなければできないこともあります。

例えば、知的財産管理技能検定で問われる問題のほうは企業の知財部門や関連部門における実務寄りの内容が多く、弁理士のほうは法律や手続き中心の知識が多くなっています。つまり、企業の知財部門や関連部門などですぐに使える知識を身に着けるのは、知的財産管理技能士の資格のほうが有利だと言えます。

また、知的財産管理技能士のほうは一級、二級、三級と知識の程度に細かいランク分けがなされており、二級や三級は一年以内という比較的短期間で取得できます。一方、弁理士は最終合格まで3~4年かかると言われており、短答試験合格、論文試験合格、最終合格というステップはあるものの、一級、二級、三級のような知識レベルの証明とは性質の違うものです。

つまり、知的財産管理技能検定は実務の中で成長に応じた級を目指すことができ、そのレベルに到達した時点で合格できるような試験なので、キャリアアップに活用しやすい資格です。

知的財産管理技能士の資格で出来ないこと

一方、知的財産管理技能士の資格で出来ないことは、知的財産に関係することで言うと、法律上、弁理士の資格が無ければ出来ないと定められている「特許や商標に関する特許庁への申請代行を業として行うこと」です。

知的財産関連のもうひとつの国家資格である「弁理士」は、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を独占業務とすることが法律上定められています。

「弁理士」の資格があれば、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を行う「特許事務所」を独立開業することが出来るのです。特許事務所を開業するための免許が弁理士資格であるとも言えます。

知的財産管理技能士は免許としての機能がないので、知的財産管理技能士の資格だけで特許事務所を開業することは出来ないのです。

知的財産管理技能士の資格が役に立たないと言われる理由

このように知的財産管理技能士は免許としての機能がないので、弁理士として活動することが出来ないのは確かであり、特許事務所を独立開業したり、特許事務所のパートナー弁理士になったり、企業の弁理士として活躍したりすることが目的であるなら、知的財産管理技能士は全く役に立たない資格です。

しかし、知的財産管理技能士は、知的財産管理に必要な技能及び知識を一定程度以上有していることを証明できるので就職・転職やキャリアアップに有効です。

ただ、知的財産管理技能検定3級に合格して取得できる「三級知的財産管理技能士」などは難易度の低い資格であることは確かですので、それ相応の知識レベルの証明にしかなりません。

つまり、知的財産管理技能士の資格が役に立たないと言われるのは、その資格に応じた評価しか受けられないという、当たり前の理由からなのです。より高い評価を受けるためには、より上位の資格が必要です。

知的財産管理技能士の資格が役に立つ具体例について

上述のとおり、知的財産管理技能士の資格だけでは特許事務所を開業することは出来ないが、知的財産管理技能士の資格があれば、知的財産管理に必要な技能及び知識を一定程度以上有していることを客観的に証明することができるということを説明しました。

また、当たり前の話ですが、知的財産管理技能士の資格は、合格した級のレベルに応じた技能及び知識を証明するものであって、合格した級を超えた実力を証明することはできないので、知的財産管理技能士の資格が役に立つ範囲は限定されている点には注意が必要です。

そこで次には、知的財産管理技能士の資格が役に立つ具体例についてみていくことにします。

企業の知的財産部門への転職に役に立つ

企業の知的財産部門、とくに特許担当については、新卒はもちろんのこと、中途入社もなかなか難しいのが実情です。ほとんどの場合、他の企業の知的財産部門出身者、しかも近い技術分野の特許を担当していた経験のある人を採用しています。

たとえ弁理士の資格をもっていても、企業の知的財産部門未経験者、例えば特許事務所出身者などは、よほどその技術分野に精通しているといった事情がない限りは中途入社も難しいことが多いです。

企業の知的財産部門への転職が難しい理由は、企業の知的財産担当者(とくに特許担当者)に求められるスキルが特殊だからです。

例えば、特許の知識のない開発者からの話を聞いて問題を整理し、特許調査や特許出願など次のステップへ進めたり、開発者に対して特許調査結果のフィードバックをわかりやすい言葉で説明し、技術的なアドバイスを行ったり、といった仕事をするのですが、特許法や特許の手続きに精通しているだけではダメで、技術分野に対する理解と高いコミュニケーション能力が要求されるのです。

これに対して特許事務所の仕事は、企業側で特許出願を行うと判断した後の出願書類作成やその権利化手続きが中心であり、企業の知的財産担当者あるいは特許担当者の仕事とは全く異なると言えるでしょう。

以上のとおり、企業の知的財産部門未経験者、例えば特許事務所出身者などでは、企業の知的財産部門への転職が難しいのですが、たとえば二級知的財産管理技能士の資格を有しているのであれば、状況は少し違ってきます。

二級知的財産管理技能士は、「知的財産管理の職種における中級の技能者」であり、企業の知財部門において戦力となる中堅クラスのスキルに相当するとされています。

つまり、二級知的財産管理技能士の資格を保有しているのであれば、少なくとも企業の知的財産担当者の仕事がどういうものか理解しているはずであり、企業の知的財産担当者としての適性はあるということの有力な証拠にはなるのです。

従って、二級知的財産管理技能士の資格があれば企業の知的財産部門未経験者であっても確実に転職できるとまでは断言できませんが、企業の知的財産担当者への転職にあたっては有利には作用すると言えるでしょう。

企業の開発部門から知的財産部門への部門異動に役に立つ

上述した「企業の知的財産部門への転職」に似ていますが、こちらは同じ会社内における部門異動についてです。企業の開発部門から知的財産部門への部門異動というのは昔からわりと一般的にある話です。開発部門に比べると知的財産部門のほうがワークライフバランスがよい場合も多く、知的財産部門への異動を希望する人をよく見かけます。

開発部門から知的財産部門への部門異動する場合、すでに社内事情には詳しく、社内での人脈もあり、技術分野にも精通しているので、ある程度の知的財産に関する法律や手続き面の知識があれば難易度はそれほど高くはないでしょう。

とはいえ、ある程度の知的財産に関する法律や手続き面の知識があるということを客観的に証明する必要があり、ここで知的財産管理技能士の資格が役に立ちます。二級知的財産管理技能士があればベストですが、三級知的財産管理技能士でも十分有利に評価されるでしょう。

発明報奨金をもらうのに役に立つ

上で説明した2つの事例は知的財産部門で働きたいという人にとって知的財産管理技能士の資格が役に立つという場合でしたが、ここでは研究・開発部門の人にとって知的財産管理技能士の資格が役に立つという場合の事例になります。

発明報奨金とは、従業員等が職務の過程で行った発明(職務発明という)に対して、会社側がその従業員等へ支給するお金のことです。会社によっては「発明報奨金」のほか「発明補償金」などとも呼ばれています。

発明すれば会社から報奨金がもらえる!?職務発明制度を簡単に解説

職務発明に対して発明報奨金を支払うことは特許法という法律(特許法第35条)の中で定められていますので、皆さんの会社でも発明報奨金を支給する制度はあるはずです。社内規程を調べてみてください。一般的には、1件の発明をすると何万円もらえるといった具体的な金額まで社内規程では定められています。

職務発明というのは研究開発などの過程で生まれた新規なアイデアであり、知的財産管理技能士の資格の有無にどう関係するのか疑問に思われるかもしれません。

実は、価値ある職務発明というのは革新的な技術に限らず、ちょっとした改良や設計変更といったものが多くあります。こうした職務発明は知的財産部門の特許担当者が開発者からヒアリングする中で発掘されるのですが、開発者側で知的財産に関する基本的な知識が欠けている場合、特許担当者との意思疎通に支障があったり、特許的に価値のあるアイデアであるのに価値がないアイデアであると思い込んでしまいヒアリング時に話をしなかったりと、せっかくの職務発明が発掘されずに埋もれてしまうということが多々あります。

もし、開発者が三級知的財産管理技能士の資格をもっているのであれば、少なくとも特許担当者との意思疎通はスムーズにいくこととなり、職務発明が発掘されずに埋もれてしまうという事態を避けることができます。

実際、特許担当者も意思疎通の難しい開発者よりも、三級知的財産管理技能士の資格をもつコミュニケーションをとりやすい開発者と頻繁に話をするようになるので、知的財産管理技能士の資格をもつ開発者とのヒアリングの機会が増え、その結果、価値ある職務発明として認められることが多くなるという訳です。

研究・開発の部門の人は、三級知的財産管理技能士の資格をとることで(二級知的財産管理技能士は不要です)、職務発明の提案機会が増え、その結果、発明報奨金をもらいやすくなります。

まとめ:知的財産管理技能士は役に立たない資格なのか?

以上のとおり、知的財産管理技能士の資格は、企業の知的財産部門で働きたいと考える人にとっては、取得しておくと転職や部門異動で有利になりますので、役に立ちます。この場合、二級知的財産管理技能士を目指しましょう。

また、研究・開発部門の人は、知的財産管理技能士の資格をとることで、職務発明の提案機会が増え、その結果、発明報奨金をもらいやすくなるという点で、役に立ちます。この場合は、三級知的財産管理技能士を目指しましょう。

一方、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を行う「特許事務所」を独立開業するためには弁理士の資格が必須であり、知的財産管理技能士は役に立ちません。そのため、知的財産管理技能士は使えない資格だと言われるのかもしれません。

しかし、弁理士の資格がなくても、企業の知的財産部門で働いたり、特許事務所の特許技術者として働いたりと、特許事務所の独立開業以外であれば知的財産に関係する職業に就くことは可能なので、それほど致命的なデメリットではないと考えます。

むしろ、三級知的財産管理技能士を取得して、次に二級知的財産管理技能士を取得するというように、段階的にステップアップできるので、弁理士のように何年勉強しても具体的な成果が残らないといったリスクが少なく、取り組みやすい資格です。ぜひ知的財産管理技能士の資格取得に向けて頑張っていただきたいです。

三級知的財産管理技能士を目指そうかと思う人向けの勉強法の記事はこちらです。

二級知的財産管理技能士を目指そうかと思う人向けの勉強法の記事はこちらです。