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知的財産権を扱う国家資格としては、「知的財産管理技能士」のほか「弁理士」がよく知られていますが、この2つの資格にはどのような違いがあるのでしょうか?
また、この2つの資格のうち、どちらの取得を目指すべきなのでしょうか?
結論から言うと、「弁理士」は、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を独占業務としており、法律上、弁理士の資格が無ければ特許や商標に関する特許庁への申請代行を業として行うことができません。「弁理士」にはこのように法律で定められた独占業務があり、「知的財産管理技能士」には独占業務が無いというのが最大の違いとなります。
従って、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を行う「特許事務所」を起業したいと考えるなら、「弁理士」を目指すべきです。
そうでなく、就職・転職に活用するとか、キャリアアップに活用するといった目的だけなら、「知的財産管理技能士」でも「弁理士」でもどちらでも有効であり、比較的取得が容易な「知的財産管理技能士」を目指したほうがよいということになります。
以下、知的財産管理技能士と弁理士との違いについて、もう少し詳しく説明することにします。
知的財産管理技能士と弁理士の存在意義
知的財産管理技能士と弁理士との2つの資格にある違いについて理解するためには、これら資格の存在意義(何の目的でこの資格が出来たのか?)を知る必要があります。
知的財産管理技能士の存在意義
2006年頃の話ですが、日本政府は、価値ある知的財産の創造・保護・活用を通して、経済・社会の新たな発展を図るという国家戦略「知的財産戦略」を打ち立てました。
知的財産戦略を進めるうえで必要不可欠なのが、知的財産を管理する技能をもった人材の育成です。そこで、知的財産を管理するために必要な技能をレベルごとに明確化した「知財人材スキル標準」という指標を定めました。
さらに、知財人材スキル標準を定めて人材育成をするためには、知識やスキルが所定レベルに到達したかどうかを測定するための検定試験も必要となりました。
そこで誕生したのが知的財産管理技能検定であり、これに合格することで付与される知的財産管理技能士の資格なのです。
つまり、知的財産管理技能士の存在意義は、知的財産管理の知識やスキルが所定レベルにあることを認定するということなのです。
弁理士の存在意義
弁理士法の第1条と第9条には次のような記載があります。
第一条(弁理士の使命)
弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。
第九条(試験の目的及び方法)
弁理士試験は、弁理士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することをもってその目的とし、次条に定めるところによって、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行う。
弁理士は、知的財産に関する専門家に与えられる資格であり、知的財産に関する専門家として必要な学識及びその応用能力を有するかどうか弁理士試験によって判定され、これに合格した者にのみ与えられるものです。
特許や商標に関する特許庁への申請代行を業として行うからには、社会的責任は重く、その業務を適正に行える知識やスキルがあることを担保するための資格が弁理士です。これが弁理士の存在意義なのです。

知的財産管理技能士と弁理士の試験制度
以上の通り、知的財産管理技能士と弁理士の存在意義は大きく違っており、そのため知的財産管理技能士と弁理士の試験制度もまた大きく違っています。以下、それぞれを簡単に説明します。
知的財産管理技能士の試験制度「知的財産管理技能検定」
知的財産管理技能検定とは、知的財産を管理する技能をもった人材の育成を目的として、知的財産を管理するために必要な知識やスキルを測定するための検定試験です。
知識やスキルのレベルによって知的財産管理技能検定1級、知的財産管理技能検定2級、知的財産管理技能検定3級(1級が最も高レベル)と三段階に分かれており、知的財産管理技能検定1級、2級、3級に合格すると、それぞれ一級、二級、三級知的財産管理技能士の資格が付与されます。
知的財産管理技能検定2級と3級は、いずれも例年3月、7月、11月と年3回実施されます。試験はどちらの級も1日で行われ、前半に学科試験、後半に実技試験(どちらも筆記試験のみ)というスケジュールです。
知的財産管理技能検定1級は、2級や3級と比べて複雑になっており、知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)、知的財産管理技能検定1級(ブランド専門業務)、知的財産管理技能検定1級(コンテンツ専門業務)、と3つの専門業務カテゴリに分かれています。
例年3月には、知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)の実技試験、知的財産管理技能検定1級(ブランド専門業務)の学科試験が実施され、例年7月には、知的財産管理技能検定1級(ブランド専門業務)の実技試験、知的財産管理技能検定1級(コンテンツ専門業務)の学科試験が実施され、例年11月には、知的財産管理技能検定1級(特許専門業務)の学科試験、知的財産管理技能検定1級(コンテンツ専門業務)の実技試験が実施されます。
知的財産管理技能検定1級(特許専門業務、ブランド専門業務、コンテンツ専門業務)、知的財産管理技能検定2級、知的財産管理技能検定3級、いずれについても「学科試験」と「実技試験」の両方に合格すれば、一級知的財産権管理技能士(特許専門業務、ブランド専門業務、コンテンツ専門業務)、二級知的財産権管理技能士、三級知的財産権管理技能士の資格を取得することができます。
受験資格は、学歴、年齢、国籍などは不問となっていますが、原則として知的財産に関連した実務経験は必要です。
ただ、知的財産管理技能検定3級の受験資格として要求される実務経験とは、知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている者、といった内容なので、実務経験は実質不要と考えてもいいです。
また、知的財産管理技能検定2級では、実務経験に代えて知的財産管理技能検定3級の合格者であってもよいので、知的財産管理技能検定3級から順に受験するのであれば、知的財産管理技能検定2級においても実務経験は不要となります。
以上のように、知的財産管理技能検定は、知識やスキルのレベルに応じて、知的財産管理技能検定1級、2級、3級と設定されています。
最もレベルの低い知的財産管理技能検定3級の合格率は60%程度、次の知的財産管理技能検定2級で合格率は40%程度と、数字を見る限りはそれほど難易度が高いものではありません。
一方で、最もレベルの高い知的財産管理技能検定1級では合格率10%以下となり、後述する弁理士試験と変わらないほどの難関試験となっています。
弁理士の試験制度「弁理士試験」
弁理士試験は、弁理士として必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とした試験です。弁理士試験に合格すると、実務修習等を経て弁理士となることができ、独占業務を行うことができるようになります。
弁理士試験は、例年5月に実施される「短答式筆記試験」、毎年6月~7月に実施される「論文式筆記試験」毎年10月に実施される「口述試験」と三段階の試験から構成されます。
短答式筆記試験に合格しなければ次の論文式筆記試験は受験できず、論文式筆記試験に合格しなければ次の口述試験は受験できません。これら三段階の試験全てに合格すれば弁理士試験の最終合格となります。
受験資格はとくに定められていません。学歴、年齢、国籍など不問となっています。知的財産に関連した実務経験なども不要ですので、在学中に受験して弁理士になることも可能です。
以上のとおり、受験資格の定めは無いものの、短答式筆記試験、論文式筆記試験、口述試験と三段階の試験を全て合格しなければならず、しかも試験問題は難易度の高いものが多く出題されます。最終合格できるのは約6%とされているので、難関試験であると言えます。
一説には、弁理士試験の最終合格に必要な勉強時間は3,000時間と言われています。毎日平均5時間ほど勉強したとしても1年半ほどかかることになります。そして、大部分の受験生が、独学ではなく弁理士受験のための予備校を利用しています。

知的財産管理技能士と弁理士どちらを目指すべきか?
以上の通り、知的財産管理技能士と弁理士の存在意義と、知的財産管理技能士と弁理士の試験制度について見てきました。これらをもとに、知的財産管理技能士と弁理士のどちらを目指すべきかについて説明します。
独立開業するのであれば弁理士の一択
もしも、あなたが、知的財産を扱う業務により独立開業したい、例えば、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務などを行う「特許事務所」を起業したいと考えるなら、弁理士を目指す、この一択となります。なぜなら、このような業務は、法律上、弁理士(または弁護士)だけが業として行える独占業務とされているからです。
弁理士の資格をもたずに知的財産に関連する業務で独立開業する道も無くはありません。例えば、特許年金(登録料)の納付代行や、特許明細書の翻訳などが、弁理士の資格が無くても業として行える業務の代表例です。しかし、取り扱える業務が限られるため、弁理士として特許事務所を開業するのに比べると、独立開業して成功するのは相当厳しいように思われます。
就職、転職、キャリアアップに活用するなら知的財産管理技能士がおすすめ
一方で、あなたが、企業の法務部門、知的財産部門、研究開発部門や、特許事務所のスタッフとして働くのであれば、弁理士の資格はもちろん、知的財産管理技能士の資格なども、特に必要ではありません。
企業の法務部門、知的財産部門、研究開発部門や、特許事務所への就職や転職、あるいはそこでのキャリアアップに活用する目的であるなら二級知的財産管理技能士や三級知的財産管理技能士を目指すのがおすすめです。
ここで、就職や転職、あるいはキャリアアップに活用するというのは、資格の取得によって、知的財産を管理するために必要な知識やスキルが一定レベルに達していることを客観的に証明するということを意味します。
とすると、知的財産管理技能士でも弁理士でも、どちらでも知的財産を管理するために必要な知識やスキルが一定レベルに達していることを客観的に証明することができるわけですが、上でも説明したとおり、弁理士試験の難易度は知的財産管理技能検定3級や2級に比べて相当高く、弁理士試験に合格するまでの時間や費用(予備校に通うため)を考えると、弁理士試験のコスパはかなり低いというのが現実です。
例えば、知的財産管理技能検定3級であれば、知的財産に関して全くの初心者であっても、数ヶ月で合格することも十分可能ですから、特に就職や転職などで、すぐに結果が欲しいという時には効果的です。

まとめ
知的財産管理技能士と弁理士との違いについてまとめますと、「弁理士」は、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を独占業務としており、法律上、弁理士の資格が無ければ特許や商標に関する特許庁への申請代行を業として行うことができないのに対し、「知的財産管理技能士」にはこのような独占業務が定められていないというのが最大の違いです。
従って、特許や商標に関する特許庁への申請代行業務を行う「特許事務所」を起業したいと考えるなら、弁理士を目指すべきです。
そうでなく、知的財産を管理するために必要な知識やスキルが一定レベルに達していることを証明する資格で、就職・転職に活用するとか、キャリアアップに活用したいと考えるのであれば、比較的取得が容易でコスパの高い知的財産管理技能士(とくに二級知的財産管理技能士あるいは三級知的財産管理技能士)を目指すのがおすすめです。