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親の相続で突然「農地」を引き継ぐことになり、サラリーマンなのに農地相続で困るという声は非常に多く聞かれます。相続そのものは法律上当然に発生しますが、農地は一般的な宅地やマンションとはまったく異なる制度で管理されており、相続後に想定外の問題が次々と表面化します。
農地は、簡単には売却できない、貸すにも制限がある、転用できない、管理義務が重いなど、相続した瞬間から負担を抱えるケースも珍しくありません。さらに、農地相続の届出義務や相続登記の義務化、農地法による厳しい制限、遊休農地として指導対象になるリスクなど、知らずに放置すると不利益につながる制度が数多く存在します。
この記事では、筆者が行政書士として相続相談を受けてきた経験をふまえ、農地相続でサラリーマンが困る理由と、その現実的な対処法を体系的に解説します。
- 本記事を読んでわかるポイント
- ・農地相続で必要となる届出や登記の基本
・売却や賃貸が難しい理由と農地法による制限
・農地の転用や放置によるリスクと注意点
・農地を相続したサラリーマンが選べる出口戦略
農地相続でサラリーマンが困る理由

ここでは、農地相続でサラリーマンが困る原因を、制度面と実務面の両方から整理します。特に多いのは「相続できたから問題ない」と思い込み、農地特有のルールを知らないまま時間が経過してしまうケースです。相続直後に必要な手続きや、よくある誤解を事前に押さえることで、後から発生するトラブルを回避しやすくなります。
農地相続の届出義務と期限
農地を相続した場合、売買や贈与で農地を取得する場合とは異なり、農地法上の「許可」は不要です。しかし、許可が不要であることと、何もしなくてよいことはまったく別です。
農地法では、相続などにより農地の権利を取得した場合、所在地の市町村に設置されている農業委員会への届出が義務付けられています。届出の期限は、相続により権利を取得したことを知った日からおおむね10か月以内とされており、期限を過ぎていても自動的に免除されることはありません。
サラリーマンの方が特に誤解しやすいのが、「相続登記を済ませたから手続きは終わり」という認識です。実務上、相続登記と「農業委員会への届出」は完全に別物であり、登記をしていても届出をしていなければ義務違反となります。農業委員会は、地域の農地利用を把握・管理する役割を担っているため、所有者が誰なのかを正確に把握する必要があるのです。
注意: 農地相続の届出を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
特に注意すべきは、農地相続の届出を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性がある点です。「過料」というのは刑罰ではありませんが、行政上の制裁であるため、決して軽視できるものではありません。
また、届出をしていないことで、その後の売却や貸付、転用の相談を進める際に、農業委員会から是正を求められるケースもあります。農地相続でサラリーマンが困る最初の原因は、この届出義務を知らないことにあると言っても過言ではありません。
農地相続登記の義務化と過料
2024年4月から、不動産の相続登記が義務化され、農地を相続した場合もその対象に含まれています。相続登記は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に行わなければならず、正当な理由なくこれを怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。以前は任意とされていた相続登記が義務化された背景には、所有者不明土地の増加という社会問題があります。
特に農地は、相続登記がされないまま世代交代を繰り返し、名義人が何代も前のままになっているケースが少なくありません。その結果、売却も貸付もできず、地域の農地利用にも支障をきたしてきました。こうした問題を是正するため、相続登記の義務化が実施されています。
農地相続でサラリーマンが困る背景には、相続登記を後回しにした結果、手続きが雪だるま式に複雑化する構造があります。例えば、兄弟姉妹で共有名義になったまま放置されると、将来的に意思決定ができなくなり、処分も管理も進められなくなります。
なお、相続登記の義務化については、法務省が公式に制度内容を公開しています。制度の正確な要件や例外については、必ず一次情報を確認することが重要です。(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)
農地相続の売却が難しい理由
農地相続でサラリーマンが困る理由として、最も多く挙げられるのが「農地は簡単に売れない」という点です。一般の宅地やマンションであれば、不動産会社に依頼して買主を探し、条件が合えば比較的スムーズに売却できます。しかし、農地は農地法によって厳しく利用目的が制限されており、自由な売買が原則として認められていません。
農地を売却する場合、原則として農業委員会の許可が必要です。この許可は形式的なものではなく、買主が「農業を適切に営む能力があるか」「取得後も継続して耕作するか」など、実質的な審査が行われます。つまり、サラリーマンが相続した農地を、同じくサラリーマンの第三者に売却することは、ほとんどの場合に認められません。
注意: 非農家への農地売却は、農地法の趣旨に反するため、農業委員会の許可が下りないケースが大半です。
このような制度は、農地を投機目的で取得させず、農業生産を守るために設けられています。しかし、実際には「農業をしない相続人」にとって大きな壁となります。さらに、地域によっては担い手農家自体が減少しており、売却先となる農業者が見つからないという現実的な問題もあります。
結果として、農地相続でサラリーマンが困る状況は、「売りたくても売れない」「相談先が分からない」「放置せざるを得ない」という悪循環に陥りやすくなります。売却を検討する場合は、相続直後から農業委員会や地域の農業関係団体に相談し、需要があるかどうかを早期に確認する姿勢が重要です。
農地相続で貸す選択肢
相続した農地の売却が難しい場合における現実的な選択肢として、「農地を貸す」という方法があります。農地の賃貸借も農地法の規制対象であり、原則として農業委員会の許可が必要です。ただし、売却と比べるとハードルはやや低く、地域の農業者にとっては借りたいニーズが存在するケースもあります。
特に注目されているのが、農地中間管理機構(いわゆる「農地バンク」)を活用した貸付です。この制度を利用すると、相続人が直接農業者と契約するのではなく、公的機関が間に入って農地をまとめて貸し付ける仕組みとなります。サラリーマンにとっては、契約管理やトラブル対応の負担を軽減できる点が大きなメリットです。
ポイント: 農地中間管理機構(農地バンク)を利用すれば、遠方に住んでいても農地を有効活用できる可能性があります。
一方で、農地の賃料は高額とは言えず、固定資産税や管理費を差し引くと、収益性は限定的です。また、貸した後すぐには返してもらえないケースもあるため、「将来は売りたい」「転用したい」と考えている場合には、賃貸借契約の内容を慎重に検討する必要があります。農地相続でサラリーマンが困る状況を回避するには、短期的な負担軽減と長期的な出口戦略を分けて考えることが重要です。
農地相続と転用の可否
農地を宅地や駐車場などに転用できれば、売却や活用の幅が広がるため、相続人としては大きな関心事項となります。しかし、農地転用は立地条件によって可否が大きく分かれ、すべての農地で自由に認められるわけではありません。
例えば、市街化区域内の農地であれば、比較的転用しやすく、農業委員会への届出のみで足りる場合があります。一方、市街化調整区域や農業振興地域内の農地では、原則として転用が認められず、例外的に許可や除外が必要となります。この判断は専門的で、個人が独断で進めると失敗しやすい分野です。
「いずれ宅地にできるだろう」「使わないから放置しておけばいい」と安易に考えていると、後になって転用不可と判明し、選択肢が狭まるケースもあります。農地相続でサラリーマンが困らないためには、相続後できるだけ早い段階で自治体の都市計画担当窓口に確認し、農地の区分や将来性を把握しておくことが不可欠です。
農地相続でサラリーマンが困るときの解決策

ここからは、農地相続でサラリーマンが困るという状況に直面した場合の、具体的な解決策を整理します。重要なのは、「放置しない」「一人で抱え込まない」「選択肢を比較する」という三点です。それぞれの制度にはメリットと注意点があるため、状況に応じた判断が求められます。
農地相続の遊休農地リスク
農地を相続したものの、耕作せずに放置していると、「遊休農地」として扱われる可能性があります。農業委員会は毎年、地域内の農地利用状況を調査しており、長期間利用されていない農地については、所有者に対して指導や勧告を行います。また、遊休農地と判断されると、固定資産税の優遇が受けられなくなる場合もあります。
指導や勧告を受けた後にも改善が見られない場合には、農地中間管理機構への農地の貸付を促されたり、将来的な利用計画の提出を求められたりすることもあります。
サラリーマンにとっては、「何もしていないのに行政から連絡が来る」という精神的負担も無視できません。遊休農地リスクを回避するには、耕作ができない場合でも、貸付や管理委託など、何らかの対応を取る姿勢が重要です。
農地相続と管理負担の現実
農地相続でサラリーマンが困る現実的な問題として、見落とされがちなのが「管理負担」です。農地は、建物のない更地であっても、何もしなくてよい土地ではありません。定期的な草刈り、水路の清掃、周辺農地との境界確認など、最低限の管理を怠ると、周囲に迷惑をかけるだけでなく、行政指導の対象となることもあります。
特に都市部に住むサラリーマンが地方の農地を相続した場合、移動時間や交通費だけでも大きな負担となります。年に数回の管理作業のために有給休暇を使わざるを得ないケースもあり、仕事との両立に悩む方は少なくありません。
注意: 農地の管理責任は、耕作していなくても所有者にあります。
さらに、草木が繁茂した農地は、害虫や害獣の温床となりやすく、近隣住民から苦情が入ることもあります。こうしたトラブルが発生すると、農業委員会や自治体から改善を求められ、結果的に精神的な負担も増大します。
管理が難しいと感じた時点で、「自分で何とかしよう」と抱え込むのではなく、早期に貸付、管理委託、処分といった方向性を検討することが重要です。農地相続でサラリーマンが困るケースの多くは、問題を先送りにした結果、選択肢が狭まってしまう点にあります。
農地相続で国庫帰属制度の利用は可能か
近年注目されている制度として、相続土地国庫帰属制度があります。これは、相続などで取得した不要な土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらう仕組みです。農地も制度の対象にはなりますが、実際には誰でも簡単に利用できる制度ではありません。
国庫帰属が認められるためには、土地の境界が明確であること、建物や工作物がないこと、土壌汚染や管理上の重大な支障がないことなど、複数の厳格な要件を満たす必要があります。加えて、審査手数料や負担金の支払いも必要となり、費用面の検討も欠かせません。
重要: 相続土地国庫帰属制度の詳細や最新の要件は、必ず法務局で事前確認が必要です。
この制度については、法務省が一次情報として公式に要件や手続きを公開しています。制度を正しく理解するためにも、必ず公式情報を確認してください。 (出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)
農地相続でサラリーマンが困る場合、国庫帰属は「最後の選択肢」と位置付けるのが現実的です。まずは売却や貸付の可能性を検討し、それでも管理が困難な場合に検討する流れが望ましいでしょう。
農地相続にかかる税金の注意点
農地を相続すると、税金の問題も避けて通れません。まず考慮すべきは相続税です。農地は宅地と評価方法が異なり、立地や利用状況によって評価額が大きく変わります。農地の特例が適用されるケースもありますが、要件を満たさなければ通常の評価となります。
また、相続後に毎年課税される固定資産税についても注意が必要です。農地として適正に利用されている場合は税額が低く抑えられますが、遊休農地と判断されると、税負担が増加する可能性があります。
注意: 税金の扱いは個別事情によって大きく異なるため、自己判断は危険です。
「思ったより税金が高かった」「特例が使えると思っていたが使えなかった」という相談は非常に多く見られます。農地相続でサラリーマンが困らないためには、相続発生後できるだけ早い段階で税理士に相談し、将来の税負担を見据えた判断を行うことが重要です。
まとめ:農地相続でサラリーマンが困る理由と対処法
以上のとおり、農地相続でサラリーマンが困る最大の原因は、農地が一般の不動産とはまったく異なるルールで管理されている点にあります。届出や登記、売却制限、管理義務、税金といった要素が複雑に絡み合い、「知らなかった」では済まされない場面が多く存在します。
重要なのは、相続した事実を把握した段階で行動を起こすことです。農業委員会への届出、相続登記の完了、農地の現状把握を早期に行い、その上で売却・貸付・転用・国庫帰属といった選択肢を冷静に比較してください。
最終的な判断は、農業委員会、法務局、税理士、行政書士などの専門家に相談したうえで行うことを強くおすすめします。正確な一次情報と専門的な助言をもとに行動することが、農地相続でサラリーマンが困る状況を回避し、後悔のない相続につながります。
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