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相続手続きを進めようとしたとき、多くの方がよくつまずくのが戸籍謄本と附票の違いです。役所で必要書類を確認すると、戸籍謄本に加えて戸籍の附票や住民票の除票が必要と言われ、「なぜこんなに種類があるのか」「どれも似ていて違いが分からない」と戸惑われる方が非常に多いのが実情です。
筆者は行政書士として相続の現場に携わっていると、この戸籍謄本と附票の役割を正しく理解できていないことで、何度も役所に足を運んだり、法務局から補正を求められたりするケースを数多く見てきました。実はこの2つの書類は、目的も証明内容も明確に分かれており、相続では「両方そろって初めて意味を持つ場面」が少なくありません。
この記事では、戸籍謄本と附票とは何が違うのかという基本から、相続実務でどのように使い分けられているのかまで、専門用語に偏り過ぎない形で丁寧に解説します。読み進めていただくことで、相続書類の全体像が整理され、「次に何を取ればよいのか」が明確になるはずです。
- 本記事を読んでわかるポイント
- ・戸籍謄本と附票それぞれの役割と証明内容
・相続手続きで両方が必要になる理由
・住民票の除票との違いと使い分け
・附票の取得方法と広域交付制度での注意点
戸籍謄本と附票とは違いは何かについての基本知識

まずは、戸籍謄本と附票がそれぞれどのような性質の書類なのかを整理します。この違いを理解することで、相続手続きで必要となる書類全体の意味が一気に分かりやすくなります。
戸籍謄本とは何を証明するものか?
戸籍謄本は、正式名称を「戸籍全部事項証明書」といい、日本国民の身分関係を公的に証明するための根本資料です。具体的には、出生によって戸籍に記載され、婚姻や離婚、死亡といった人生の節目ごとに記録が積み重ねられていきます。
相続の場面で戸籍謄本が重要視される理由は、法定相続人が誰であるかを法律上確定させる唯一の資料がこの戸籍謄本だからです。例えば、被相続人に子がいるのか、配偶者はいるのか、すでに亡くなった子がいて代襲相続が発生するのか、といった点は、戸籍謄本を通してでなければ正確に判断できません。
実務では、「出生から死亡まで連続した戸籍」を集める必要があります。例えば、途中で本籍地が変わっている場合、そのたびに新しい戸籍が作られているため、現行の戸籍謄本だけでは足りず、除籍謄本や改製原戸籍も含めて収集することになります。
重要: 相続人の確定においては、戸籍抄本では不十分であり、必ず戸籍謄本(全部事項)が求められるのが原則です。
なお、戸籍制度そのものは法律に基づいて運用されており、その概要は法務省が公式に公開しています。制度の一次情報としては、法務省の戸籍制度解説が参考になります(出典:法務省「戸籍のABC(Q1~Q5)」)。
戸籍の附票とは住所履歴の証明
一方、戸籍の附票は、戸籍とセットで管理されている書類ですが、その役割は戸籍謄本とはまったく異なります。附票が証明するのは、その人がどの住所に住んでいたかという履歴です。
戸籍には本籍地が記載されますが、本籍と実際に住んでいる住所(現住所)は一致しないことがほとんどです。そのため、戸籍だけを見ても「この人がどこに住んでいたのか」は分かりません。そこで補完資料として存在するのが附票です。
附票には、戸籍に在籍していた期間中の住所の変遷が、転居日とともに時系列で記録されています。引っ越しを重ねている場合でも、附票を確認すれば、住所の流れを追うことができます。
相続実務では、この住所履歴が極めて重要になります。特に不動産の相続登記では、登記簿に記載された住所と、死亡時の住所、そして戸籍上の人物が同一であることを説明する必要があるためです。附票は身分関係を証明するものではないため、相続人の確定には使えませんが、本人性の確認では欠かせない資料です。
戸籍謄本と附票の記載内容の違い
戸籍謄本と附票の違いを整理するうえで、「何が書いてある書類なのか」を比較するのは非常に有効です。端的に言えば、戸籍謄本は人の関係、附票は場所の履歴を示します。
戸籍謄本には、氏名、出生年月日、親子関係、婚姻や離婚の事実、死亡日などが記載されます。一方、附票には住所とその異動日が中心に記載され、身分事項は含まれません。以下、戸籍謄本と附票の違いを表にまとめます。
| 書類 | 主な記載内容 | 相続での役割 |
| 戸籍謄本 | 出生・婚姻・死亡・親子関係 | 相続人の確定 |
| 戸籍の附票 | 住所の履歴・異動日 | 同一人物の証明 |
このように、戸籍謄本と附票とは役割が明確に分かれているため、どちらか一方だけでは相続手続きが完結しない場面が多いのです。
戸籍謄本と附票の保存期間
戸籍には各自治体における保存期間が定められています。この保存期間については、相続実務では見落とされがちですが、非常に重要なポイントです。現在の制度では、戸籍および附票、住民票および除票について、150年間保存することが原則とされています。
この150年の保存期間により、被相続人がかなり前に転居していた場合でも、住所の履歴をさかのぼれる可能性が高くなっています。150年間の保存期間が定められる制度改正前は、「古すぎて住所が分からない」という理由で、追加資料の提出に苦労するケースも多くありましたが、現在では実務上大きく改善されています。
ただし、制度改正以前のデータや、市区町村の管理状況によっては、一部の記録が欠けていることもあります。その場合は、他の補足資料で対応する必要が出ることもあります。
住民票の除票との違い
住所を証明する書類として、附票と並んでよく使われるのが住民票の除票です。これは、転出や死亡によって住民登録が抹消された際の最終記録を指します。
相続の実務上は、附票または住民票の除票のどちらかで足りるケースが多く、必ずしも両方を提出する必要はありません。ただし、不動産登記簿の住所が非常に古い場合など、除票だけではつながらないときに、附票が補完的に使われることがあります。
また、除票と附票のどちらの書類が必要かは提出先によっても異なります。必ず事前に法務局や金融機関で確認し、自分の勝手な判断で対応しないよう注意してください。
相続手続きで見る戸籍謄本と附票の違いとは

ここからは、相続という具体的な手続きの中で、戸籍謄本と附票がどのように使われているのかを、実務目線で解説します。戸籍謄本と附票の違いは理屈として理解していても、実際の相続手続きに落とし込んだ瞬間に「結局どちらが必要なのか」「なぜ両方求められるのか」が分からなくなる方が少なくありません。相続では、権利関係の確定と同一人物性の証明という二つの目的を、別々の書類で満たす必要があるのです。
この章では、不動産相続を中心に、どの場面で戸籍謄本が必須となり、どのような場合に附票が重要な役割を果たすのかを、実務で頻出するケースを交えながら整理します。全体像を把握することで、書類収集の無駄や手戻りを防ぐことができます。
相続登記で必要な戸籍謄本
不動産の相続登記では、被相続人が死亡した事実と、その財産を引き継ぐ法定相続人が誰であるかを、第三者である法務局に対して明確に証明しなければなりません。この役割を担うのが、被相続人の出生から死亡までを連続して確認できる戸籍謄本一式です。
具体的には、現在の戸籍謄本だけでは足りず、結婚や転籍、戸籍制度の改製などによって作成された改製原戸籍や除籍謄本も含めて収集する必要があります。これにより、被相続人に認知した子や前婚の子がいないか、養子縁組の有無なども含め、相続人関係を網羅的に確認します。
このように出生から死亡までの連続した戸籍を収集する工程を省略したり、途中の戸籍が欠けた状態で申請すると、相続登記は受理されません。法務局は、提出された戸籍一式をもとに相続関係説明図の内容を精査し、法的に問題がないかを判断します。そのため、戸籍謄本は相続登記の「根拠資料」として、極めて重要な位置付けにあります。
法務局が相続登記で求める戸籍の範囲や考え方は、公式に整理されています。詳細は法務省の案内も参考になります(出典:法務省「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」)。
なお、相続登記は2024年から義務化されており、登記申請を怠るとペナルティが科せられます。そのため、正確な戸籍収集がこれまで以上に重要になっています。書類不備による補正や再申請は、時間的・精神的な負担が大きくなるため、最初の段階で丁寧に進めることが肝要です。
相続で附票が必要なケース
相続手続きにおいて戸籍謄本のほかに附票も必要になる代表的な場面は、不動産登記簿上の住所と、被相続人の死亡時の住所が一致しない場合です。実務ではこのケースが非常に多く、特に長期間売買や登記変更がされていない不動産では、数十年前の住所が登記簿に残ったままになっていることがあります。
相続登記では、「登記名義人=被相続人」であることを証明しなければなりません。しかし、登記簿上の住所と死亡時の住所が異なると、書類上は別人であるかのように見えてしまいます。このギャップを埋めるために用いられるのが、戸籍の附票です。
附票には、戸籍に在籍していた期間中の住所の異動履歴が時系列で記載されています。これを用いることで、登記簿に記載された古い住所から、最終的な住所までを一本の線でつなぎ、同一人物であることを論理的に説明できます。逆に、附票がなければ、この連続性を示すことができず、登記申請が却下または補正対象となることがあります。
なお、附票が保存期間満了や自治体の事情により取得できない場合は、住民票の除票や戸籍の除票を組み合わせて対応するケースもあります。
また、相続登記以外にも、戸籍の附票を用いることがあります。例えば、金融機関での預貯金解約や証券口座の名義変更において、本人確認の補助資料として附票の提出を求められることがあります。これは、金融機関側が厳格な本人確認義務を負っているためであり、住所履歴を確認できる資料が重視されるためです。
このように、附票は「相続人を確定する書類」ではありませんが、「その人物が確かに被相続人本人である」ことを裏付ける重要な証拠資料です。戸籍謄本と附票は役割が異なり、相続手続きでは両者が補完し合う関係にあることを理解しておく必要があります。
戸籍謄本と附票の取得方法
戸籍謄本は原則として本籍地の市区町村で取得しますが、現在は広域交付制度により、条件を満たせば本籍地以外の最寄りの役所でまとめて請求することも可能です。一方で、附票は広域交付の対象外であり、必ず本籍地に請求する必要があります。ただし、自治体によっては、附票の郵送請求やオンライン対応の可否が異なるため、事前に各自治体の公式サイトを確認することが重要です。
なお、広域交付制度は、相続実務において非常に便利な仕組みですが、取得できる対象書類が限定されています。取得できるのは戸籍謄本や除籍謄本に限られ、附票や抄本は含まれませんので注意が必要です。
ポイント: 戸籍謄本は広域交付で効率化し、附票は本籍地で個別に取得するという役割分担が実務上の基本です。
まとめ:戸籍謄本と附票とは違いは何か?相続手続きで迷わないための基礎知識
相続における戸籍謄本と附票とは何が違うのかを整理すると、戸籍謄本は誰が相続人かを確定する書類であり、附票はその人が誰であるかを住所でつなぐ書類だと言えます。
戸籍謄本と附票のどちらか一方が欠けると、相続手続きが止まってしまうこともありますので、必要に応じて慎重な判断が必要です。
なお、この記事の内容は一般的な実務の目安であり、最終的な判断や必要書類はケースごとに異なります。正確な情報は必ず公式機関で確認し、不安がある場合は専門家へ相談することをおすすめします。
次のアクションへのヒント
■ 戸籍謄本はどこで取れるかについてはこちらの記事も参考になります。
■ 戸籍謄本はどこまで先祖を遡れるかについてはこちらの記事も参考になります。