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法務局への相続登記で提出する遺産分割協議書の「ひな形」を探している方の多くは、「この書式で本当に相続登記が通るのか」「自分で内容を修正しても問題にならないのか」といった不安を抱えているのではないでしょうか?遺産分割協議書は、相続手続の中でも特に重要度が高い書類であり、遺産分割協議書のひな形についての理解が不十分なまま作成すると、遺産分割協議書の内容に不備が生じ、法務局や金融機関で手続が止まってしまうこともあります。
筆者は行政書士として数多くの相続相談に対応してきましたが、「法務局のひな形を使ったのに、なぜか補正を求められた」という声は決して少なくありません。多くの場合、その原因はひな形そのものに問題があるのではなく、ひな形の使い方や、前提条件を正しく理解していない点にあります。
この記事では、法務局で使える遺産分割協議書の「ひな形」を軸に、ひな形のダウンロード方法、正しい書き方、相続登記で求められる実務上の注意点、不動産相続ならではの記載ルールまでを、現場目線で丁寧に解説します。遺産分割協議書のひな形をそのまま使ってよいケースと、必ず修正すべきケースの違いも明確にしますので、初めて遺産分割協議書を作成する方でも、判断に迷わず進められるはずです。
- 本記事を読んでわかるポイント
- ・法務局の遺産分割協議書ひな形の入手方法と使い方
・相続登記に通る遺産分割協議書の書き方の基本
・不動産相続で特に注意すべき実務ポイント
・遺産分割協議書ひな形を利用する際の注意点
法務局で公開している遺産分割協議書「ひな形」の基本理解

ここでは、法務局が公開している遺産分割協議書「ひな形」の位置づけや特徴を整理します。なぜ多くの専門家が「まず法務局のひな形を基準に考えるべき」と言うのか、その理由を理解することが重要です。
参考: 法務局「不動産登記の申請書様式について」
法務局のひな形のダウンロード方法
法務局の遺産分割協議書「ひな形」は、法務局の公式サイトにある不動産登記に関する案内ページで「記載例」の中で公開されています。法務局の「不動産登記の申請書様式について」のページにアクセスし、ページの中ほどに、「2-1 相続」の「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」という項目があります。ここの「記載例(Word PDF)」のいずれかをクリックすると、「遺産分割協議書の例」という遺産分割協議書の具体的な記載例を含んだ書類をダウンロードできます。不動産に関しては、この「遺産分割協議書の例」(Word版)を自分にあわせて上書き編集するといいでしょう。
この法務局の「ひな形」(遺産分割協議書の例)は、相続登記の申請を審査する法務局が作ったものである点で、形式的な不備が起こりにくいという安心感と、誰でも無料でダウンロードできるという手軽さが大きな特徴です。
ただし、法務局のひな形は、不動産に関する記載しか掲載されておらず、例えば預貯金や株式など不動産以外の遺産については、必要に応じてアレンジして追記する必要がある点には注意が必要です。法務局のひな形は「完成品」ではなく、「最低限の基準を示したサンプル」と理解することが重要です。
遺産分割協議書の書き方の基本
遺産分割協議書には、法律で定められた厳密な様式はありません。しかし、相続手続で有効な書類として認められるためには、必ず押さえておくべき基本項目があります。
具体的には、被相続人の氏名、最後の本籍地または住所、死亡年月日、相続人全員の氏名と続柄、そして誰がどの遺産を取得するのかという分割内容です。これらの情報が一つでも欠けると、遺産分割協議書としての効力が疑われる可能性があります。
前述した法務局の遺産分割協議書のひな形は、不動産のみが遺産分割の対象となり、相続人と遺産分割方法が特定のケースに限定されますが、被相続人の氏名、最後の本籍地または住所、死亡年月日、相続人全員の氏名と続柄、分割内容といった必須項目が盛り込まれた構成になっています。そのため、初めて遺産分割協議書を作成する方にとっては、全体像を把握するための指針として非常に有用です。
一方で、相続人の構成がひな形と異なる場合や、不動産以外の遺産もある場合、さらには代償分割や換価分割など特殊な分割方法を採用するような場合には、法務局のひな形だけでは対応が不十分です。その際は遺産分割協議書のひな形に条文を追加したり、表現を調整したりする必要があります。
注意: ひな形の文章を機械的に当てはめると、実際の合意内容と食い違うリスクがあります。
相続登記で必要な遺産分割協議書の記載例
相続登記に使用する遺産分割協議書で、最も厳しくチェックされるのが不動産の記載内容です。不動産は、所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造など、登記簿に記載されている情報を正確に反映させる必要があります。
特に注意したいのが、住所表示と地番の違いです。日常生活で使っている住所は、登記上の所在地とは一致しないことが多く、住民票の表記をそのまま転記すると法務局で補正の対象になります。
登記申請では、登記事項証明書の記載が絶対的な基準になる点には注意が必要です。法務局の遺産分割協議書ひな形は、この点を前提に作られており、登記簿どおりの表現を用いる構成になっています。そのため、相続登記用の遺産分割協議書ひな形としては信頼性が高く、実務との親和性も高いといえます。
不動産相続に強い法務局の遺産分割協議書ひな形
法務局の遺産分割協議書ひな形が評価されている最大の理由は、不動産相続を強く意識した内容になっている点です。不動産は相続財産の中でも金額が大きく、かつ登記という公的手続が必須となるため、書類の正確性が強く求められます。
一方、預貯金や有価証券については、金融機関ごとに独自の書式が用意されていることも多く、必ずしも法務局基準が直接適用されるわけではありません。しかし、不動産については、法務局の基準を満たしているかどうかが最重要なのです。
その意味で、遺産分割の対象に不動産を含む場合の遺産分割協議書を作成する際は、「まず不動産相続で通用する内容か」という視点で確認することが、全体の手続きを円滑に進める近道になります。
Wordで編集できる記載例を選ぶ
前述した法務局が公式に提供している遺産分割協議書のひな形(記載例)には、Word形式とPDF形式がありますが、実際の作業ではWord形式で編集する方が圧倒的に便利です。そのため、多くの専門家は、法務局の記載例を基にしたWordデータを内部資料として活用しています。
インターネット上には、民間の司法書士事務所や行政書士事務所が、Word形式の遺産分割協議書ひな形を公開しているケースもあります。これらは法務局のひな形では対応できない内容もカバーされていることが多く、編集のしやすさという点でも有用ですが、内容の正確性や更新状況にはばらつきがあるので、利用する際には注意が必要です。
重要: ひな形を利用する場合も最終的な内容確認と責任は作成者自身にあります。
法務局の遺産分割協議書「ひな形」を使用するときの注意点

ここからは、法務局の遺産分割協議書ひな形を実際に使用する際に、特に注意していただきたい実務上のポイントを解説します。見落としがちな点を事前に把握しておくことで、無用な手戻りを防ぐことができます。
実印と印鑑証明の注意点
遺産分割協議書は、相続人全員が内容に合意していることを証明する書類です。そのため、原則として相続人全員が実印で押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。法務局での相続登記申請のみならず、金融機関での預貯金の払い戻しなどでも同様に必要となります。
印鑑証明書の発行日については、法律上の明確な期限はありませんが、あまりにも古いものは、金融機関や法務局で再提出を求められる可能性があります。実務上は、取得から3か月以内を一つの目安とするケースが多いです。
注意: 相続人の一人でも押印や印鑑証明が欠けると、遺産分割協議書全体が無効と判断されるおそれがあります。
相続登記義務化と3年期限
相続登記は、2024年4月から法律上の義務となりました。相続の開始を知った日から原則3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。この期限を過ぎた場合、過料の対象となる可能性があります。過料の金額は事案ごとに判断されますが、一般的な目安として最大10万円とされているので注意が必要です。
ただし、これはあくまで制度上の枠組みであり、実際の運用については最新情報を確認する必要があります。この相続登記の申請義務化に関する詳細については、法務省が公表している公式情報を必ず確認してください(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
不動産表記と地番の違い
不動産の表記ミスは、相続登記における典型的なトラブルの一つです。特に多いのが、先にも少し触れたとおり、住居表示と地番を混同してしまうケースです。
住居表示は郵便物の配達などを目的とした表示であり、登記事項証明書上の所在地とは異なります。遺産分割協議書では、必ず登記事項証明書に記載されている地番や家屋番号を用いなければなりません。
法務局の遺産分割協議書ひな形は、登記事項証明書を見ながら転記することを前提としています。作成時は、必ず最新の登記事項証明書を取得し、一字一句確認しながら記載してください。
原本還付と提出書類一覧
法務局への相続登記の申請では、遺産分割協議書のほか、戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書など、多数の書類を提出します。もし、法務局以外の他の提出先でも使用するために、これらの原本を手元に残したい場合は、原本還付の手続が必要です。原本還付を希望する場合は、提出する書類のコピーに「原本に相違ありません」と記載し、申請人が署名押印するのが一般的な方法です。
なお、金融機関など法務局以外の提出先でも、原本還付の対応が可能ことも多いですが、原本還付の具体的な方法については、提出先によって異なる場合があるので、提出先ごとに確認が必要です。
まとめ:法務局で使える遺産分割協議書の「ひな形」とその利用時の注意点
法務局の遺産分割協議書ひな形は、相続登記を見据えた非常に実務的な資料であり、これから初めて遺産分割協議書を作成する方にとって強力な指針となります。
一方で、法務局のひな形も、すべての相続ケースにそのまま当てはまる万能な書式ではありません。相続人の構成や遺産内容によっては、文言の追加や修正が不可欠です。
勝手な解釈でひな形の文言の追加や修正をした場合、記載の不備により相続登記が通らないおそれもあります。遺産分割協議書の作成において不安を感じた場合や判断に迷う場合は、行政書士や司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
また、相続登記の制度や運用は変更されることがあります。正確で最新の情報については、必ず法務局や法務省の公式サイトをご確認ください。最終的な判断は、ご自身の責任において行っていただく必要があります。
次のアクションへのヒント
■ 遺産分割協議書の書き方と預貯金引出しについては、こちらの記事も参考になります。